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名古屋地方裁判所一宮支部 昭和38年(ワ)49号 判決 1964年6月30日

理由

一  原告主張事実中、破産会社が、原告主張の如く破産宣告を受け、原告がその破産管財人に選任されたことは当事者間に争がない。

二  成立に争ない甲第一号証と証人葛谷繁和の証言を綜合すると、破産会社は、昭和三十五年九月二十三日頃取引関係に在つた宝和商事から金百万円の金融の申込を受け、同人振出の金額百万円、振出日昭和三十五年九月二十日、満期同年十二月五日、振出地一宮市、支払地岐阜県羽島郡笠松町、支払場所株式会社十六銀行笠松支店と定めた約束手形の交付を受けたが、破産会社としては、右宝和商事の手形のみでは心許なしとしたため、その代表者が相互に姻戚関係に在つた被告の裏書を求めたうえ、訴外株式会社十六銀行木曾川支店にこれを裏書譲渡し、同支店から割引金百万円を得てこれを宝和商事に交付した事実(右手形の振出及び裏書の事実は、当事者間に争ない)を認めることができる。そして、この事実に、後叙認定事実及び本件口頭弁論の全趣旨を綜合すると、破産会社のした右百万円の交付は、まさに、これも手形貸付なるものと認めるを相当とし、されば、宝和商事は、破産会社に対し右消費貸借上の債務を負担するに至つたというべきである。

三  そこで、被告が、宝和商事の破産会社に対する右債務について連帯保証したかどうかについて判断する。

本件手形は、宝和商事において、破産会社に対する貸金債務の支払確保の目的で振り出され被告は、これに裏書したものであることは、さきに、認定したとおりであるところ、原告は、被告のした右手形裏書の事実を目するに、原因関係債務に関する民法上の保証である旨主張するから、以下、この点について按ずるに、前掲認定事実に、証人葛谷繁和の証言によつて認められる破産会社は、右貸金債務を保証させる趣旨で被告の裏書を求め、その旨被告に電話連絡した事実をも彼此綜合して考察すれば、他に、特段の事実関係を窺い得ない本件では、被告は、保証の趣旨で本件手形に裏書したものと推認すべきを相当とする。しかるところ、このように金銭消費貸借上の債務の支払を確保する目的で振り出された約束手形について、振出人の金融を容易ならしめるため保証の趣旨で裏書した者は、格別の事情なき限り、原因関係上の債務につき連帯保証する意思ありと推定するを相当とするところ、本件で顕われたすべての証拠を検討しても、未だ、当事者に反対の意思ありとも認め難い。さすれば、結局、被告は、本件貸金債務について民法上の連帯保証債務を負担したものといわねばならないのである。

四  (以下省略)

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